第30回 日本静脈麻酔学会

会長挨拶

このたび記念すべき第30回の学術集会を,東京大学伊藤国際学術研究センターで開催させていただくことになりました。今回の開催テーマは「イノベーションがいま始まる」です。イノベーションとは「革新」や「刷新」,「新機軸」などを意味する言葉で,革新的な技術や発想によって新たな価値を生み出し,社会に大きな変化をもたらす取り組みを示します。

2019年末からの新型コロナウイルス流行下にあっても,2020年にレミマゾラムが発売され,循環変動の少ない新しい全静脈麻酔(TIVA)が利用可能となりました。2022年後半に全静脈麻酔支援シリンジポンプ制御ソフトウェアが薬機法承認となり,新たに「ソフトウェア医療機器」による全身麻酔関連医薬品の「自動投与制御」という領域が出現しました。また時期を同じくして,術後合併症につながる周術期の低血圧を「予測する」モニターの臨床使用が現実的となりました。更に本年春には,日本麻酔科学会からこれらの機器を使用するにあたっての指針が公開されました。今後,静脈麻酔薬の自動投与制御システムが粛々と導入される見込みです。今まで夢のように考えられていた全身麻酔の自動制御という非常に大きな変革が,まだ第一歩ではありますが遂に始まるのです。

そこで本学会では,プロポフォールを用いた従来のTIVAに加えて新たにレミマゾラムを用いたTIVAに関するセミナー,静脈麻酔薬-自動投与制御システムを用いたTIVAの実際を紹介するバーチャル見学会,自動制御と付き合うためのシンポジウム,適切な麻酔状態が確保されていても別途対応が必要な周術期低血圧に関するセミナー,そして本学会30周年を迎えてTIVAの振り返りに関するセミナーを企画しました。非常に盛りだくさんではありますが,何れの内容も最新の静脈麻酔を理解・実践するうえで皆様のお役に立てると存じます。

このような大きな変革を迎える年において本学会を開催する機会を頂きましたことを,心から感謝いたします。皆様のご協力のもと本学会が益々発展すると共に,静脈麻酔におけるイノベーションが広く普及することを祈念して,皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。

2023年6月

長田 理(ながた おさむ)
第30回日本静脈麻酔学会 会長
(東都春日部病院 麻酔科部長)

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